感動の実話を集めた“ラジオ発の単行本”が話題を呼んでいる。ニッポン放送のラジオ番組「うえやなぎまさひこのサプライズ」(毎週月〜金曜午前8時30分)の人気コーナー「10時のちょっといい話」から生まれた本「車いすのパティシエ」だ。心に響くエピソードに目を潤ますリスナーや読者が急増し、発行部数は10万部を突破。「感動の輪」が一段と広まる勢いだ。(臼井慎太郎)
≪実話をそのまま≫
「10時のちょっといい話」は、ラジオ作家が取材を重ねまとめた原稿をパーソナリティー(番組司会者)を務める、うえやなぎまさひこさん(49)が読み上げるコーナー。同番組がスタートした2002年から立ち上げ、放送した実話は、約1000話に達した。
今回の単行本(発行・ニッポン放送、発売・扶桑社)は、特に反響の大きかった「ちょっといい話」23話を集め書籍化したもので、昨年11月にコンビニエンスストアの「セブン−イレブン」と書店で発売した。
以来、重版を重ねて6版に到達し、品切れの店舗が続出。読者の心をつかんだ理由ついてニッポン放送は「放送で流した話をそのまま本にした。過剰な装飾を加えず出版化したことが、良かったのでは」(エンターテインメント開発部)と分析している。
本のタイトルとなった「車いすのパティシエ」は、一流のパティシエ(菓子職人)として、愛されていた男性の人生が突然暗転するという内容だ。
彼を「閉塞(へいそく)性動脈硬化症」という病気が襲い、仕事場で意識を失い緊急入院。医師から重大な選択を迫られた妻が、足の切断手術を決意。その後、放心状態が続いた彼が、隣のベッドにいた男の子に勇気づけられ、驚異的な回復を成し遂げるというストーリーだ。
こうした実話に心を打たれるリスナーは予想以上に大きく、「車でたまたま聴いていたら涙で運転ができず路肩に入った」などという声が幅広い年代層から寄せられた。購買層も広範囲にわたり、20代28%、30〜40代53%、50代以上16%という構成。男女比はほぼ半々だ。
≪心に響くメディア≫
電通の国内広告市場調査によると、2004年にインターネット広告費が初めてラジオ広告費を上回るなど、新興メディアの台頭が際立っている。しかし、リスナー一人一人に寄り添うようなラジオの特性も再認識されており、その象徴が同書の売れ行きだ。
さらに、昨年11月に東京都千代田区の日比谷公園で2日間に渡り開催した、リスナーと触れ合うイベント「ラジオパークin日比谷」に、約10万5000人に達するファンが詰め掛けた。
ニッポン放送の磯原裕社長は「『心のひだ』をふるわし『心のぬくもり』をつくるラジオの機能は、ネットよりも高いのではないか。(殺伐とする事件が多い現代の中で)ラジオが見直される時代が来た」と語る。